事実を整理して聞いてみる
社労士が実務判断のために質問するなら、例えば次のように聞きます。
「事業所自体に被害はなく、設備も使用でき、営業は可能でした。一方、台風により公共交通機関が計画運休となったため、会社が全従業員を休業としました。就業規則に災害時の特別有給休暇の定めはありません。一部の職種はテレワークが可能です。
この場合の労働基準法第26条の休業手当について、次の観点から整理してください。
①会社が命じた休業か、従業員個人の欠勤か
②不可抗力の要件を満たすか
③テレワーク、時差出勤など、休業を回避する方法があったか
④職種ごとに判断を分ける必要があるか
⑤年次有給休暇として処理できるか
⑥結論を出すために、ほかに確認すべき事実は何か」
ここまで尋ねると、AIの答えは具体的になります。
ただし、
「休業手当を払えばよい」という一つの結論になるとは限りません。例えば、次のように整理されます。
会社が全従業員に休業を命じたのであれば、労働基準法第26条の問題になります。
事業所に被害がなく営業も可能であった以上、直ちに不可抗力とはいえません。
一方で、暴風警報や避難情報が出ていたのか、安全に出勤できる手段があったのか、会社が時差出勤やテレワークを検討したのかによって、判断は変わります。
テレワークができる職種については、仕事をさせる方法があったにもかかわらず会社が休ませたのであれば、不可抗力とは認められにくくなるでしょう。
一方、現場でなければ仕事ができず、安全な通勤手段もなかった職種については、別の判断になる可能性があります。
また、会社が休業とした日を、本人の希望を確認せず、一律に年次有給休暇として処理することはできません。
詳しく質問することで得られるものは、必ずしも「一つの答え」ではありません。誰について同じ判断ができ、誰について判断を分けなければならないのか。
何がすでに分かっていて、何を追加で確認しなければならないのか。
そこまで見えるようになるのです。