【AIと向き合う⑤】AIは、自信満々に間違える
―「鵜呑みにしない」という習慣―
AIに質問をすると、たいてい、すらすらと答えが返ってきます。
言い回しもなめらかで、自信にあふれている。
その堂々とした様子に、つい「そうなんだ」と信じてしまいそうになります。
けれど、ここに、ひとつ気をつけたいことがあります。
AIは、間違えることがあります。
しかも、間違っているときも、正しいときと同じ口調で答えるのです。
<正しい顔をした、まちがい>
たとえば、ある手当が社会保険の対象になるかどうか。
ある制度の、細かい要件。
こうしたことをAIに尋ねると、もっともらしい答えが返ってきます。
でも、よく見ると、少し古い情報だったり、似て非なる制度と混ざっていたり、条文の言葉がほんの少しずれていたりすることがあります。
社労士として日々この分野にいると、「ここは確認が必要だ」と気づけることがあります。
けれど、その分野を知らない人には、見分けがつきません。
なめらかで、自信のある文章ほど、かえって「正しそう」に見えてしまうのです。
<なぜ、労務では特に怖いのか>
労務の答えは、人のお金や生活に直結します。
給与、手当、社会保険、解雇、年金。
どれも、間違った理解のまま処理してしまうと、あとになって大きな問題になりかねません。
しかも、困っている人ほど、早く答えがほしいものです。
だからこそ、AIのなめらかな答えに、飛びつきたくなる。
その気持ちは、よく分かります。
でも、急いでいるときほど、いったん立ち止まりたいのです。
<疑うのではなく、確かめる>
私がおすすめしたいのは、AIを疑うことではありません。
AIの答えを「たたき台」として受け取るという姿勢です。
返ってきた答えに対して、こう問い直してみる。
「本当に、そうだろうか」
「これは、いつの時点の情報だろうか」
「どの根拠にもとづいているのだろうか」
そして、人の生活がかかった大事な判断は、最後に、根拠資料や専門家に戻って確かめる。
AIに全部をゆだねるのではなく、AIと一緒に考えて、決めるのは人。
この順番を、忘れないようにしたいのです。
<AIの答えを仕事で使う前に、確認したいこと>
AIの答えを仕事で使う前に、最低限、ここだけは確認したいものです。
1. その情報は、いつ時点のものか
2. 法令・通達・公的資料など、根拠が確認できるか
3. 似た制度と混同していないか
4. 自社の就業規則・雇用契約・実態に合っているか
5. 人のお金・生活・処遇に影響する判断ではないか
最後の5つ目に当てはまるときは、AIの答えだけで決めない。
専門家や、根拠となる資料に戻る。
このひと手間が、後の大きなトラブルを防ぐことにつながります。
<AIと、上手につき合うために>
前回、私は「AIの言葉を、そのまま借りない」と書きました。
今回の「鵜呑みにしない」も、根っこは同じです。
AIは、とても賢い相談相手です。
たくさんのことを、すばやく整理してくれます。
けれど、最終的な責任は、いつも人の側にあります。
鵜呑みにしないことは、AIを遠ざけることではありません。
むしろ、AIの得意なことと、苦手なことを知って、上手につき合うこと。
それが、これからの時代に、AIを道具として使いこなすということなのだと思います。