「配属ガチャ」はもうやめよう——偶然に左右されない働き方のはじめ方
春、新社会人として働き始める若者たち。
希望と不安を胸に、彼らは初めての「配属先」の発表を待ちます。
しかしその結果が、自分の希望とはまったく違うものだったら——。
SNSではそんな状況を「配属ガチャ」と呼び、当たり外れを嘆く声があふれています。
この“ガチャ"という言葉には、「どこに配属されるかは運まかせ」という皮肉が込められています。
でも、本当にそれでいいのでしょうか?
なぜ「配属ガチャ」は起こるのか?
この問題の背景には、企業と新入社員のあいだにある“すれ違い"があります。
まず、新社会人にはまだ働いた経験がありません。
自分がどんな仕事に向いているのか、はっきり分かっていない人がほとんどです。
希望を出すときも、インターンやネットの情報を参考にしているだけで、「本当に自分に合う仕事なのか」は、やってみなければ分かりません。
一方で、企業側も「誰にどの仕事を任せるか」をしっかり考えているとは言えません。
特に日本の企業は「メンバーシップ型」と呼ばれる採用スタイルが多く、「まず人を採って、あとで部署を決める」という流れが一般的です。
その結果、新入社員が希望しない部署に配属されるケースも少なくありません。
また、日本では「ジョブローテーション(部署をいろいろ経験させる制度)」が根強く残っており、人材の空きが出た部署に新入社員を入れるような配置もあります。
こうした人事の仕組みが、“ガチャ"のような配属を生んでいるのです。
海外ではどうしているのか?
たとえばアメリカや中国では、20代前半の転職は当たり前。
若いうちにいろんな仕事を経験し、自分に合う職種を探す「試行錯誤」が前提となっています。
大学生の間に長期インターンをして、自分に合う仕事を見つけてから就職する文化も根づいています。
一方、日本の就職活動は短期間で一発勝負。職種別に採用する企業はまだ少なく、配属後に「思っていた仕事と違った」というギャップを感じやすい 構造になっています。
「はずれ」でも学べることがある
とはいえ、すべてを「運まかせ」と考えるのももったいない話です。
スタンフォード大学のクランボルツ教授は「キャリアの8割は偶然で決まる」と話しています。
最初は興味のなかった仕事が、やってみたら得意だった。
配属先の上司や先輩が、自分にとって人生の転機になった——そんな例は少なくありません。
偶然"をただの運ではなく、「チャンス」として活かす力。
それこそが、これからの時代に必要な考え方なのかもしれません。
企業にも変化が求められる
もちろん、個人の心がけだけでは解決できない部分もあります。
企業も、「どんな人に、どんな仕事が向いているか」をもっと丁寧に見極める必要があります。
最近では、社員の希望を聞いて異動できる「社内公募制度」や、副業・兼業を認める会社も増えてきました。
こうした仕組みが整えば、配属のミスマッチも減っていくはずです。
「配属ガチャ」から「キャリア対話」へ
配属ガチャは、ただの不満ではありません。
それは、働く人と会社の間にある“ズレ"を示すサインです。
これからの時代は、「運」に任せるのではなく、「話し合い」でキャリアをつくっていくことが大切です。
本人の気持ちと会社の制度がきちんとかみ合えば、「はずれ配属」なんて言葉は、過去のものになるかもしれません。