なぜ日本の職場は「まともに休めない」のか──ズレた“頑張り”が企業を蝕む
かつて日本人は「働き者」として世界から尊敬を集めた。だが今、その美徳が、自らの心身を蝕み、組織の活力すら奪いかねない危険因子になっているのではないか──。
パーソル総合研究所が実施した「はたらく人の休憩に関する定量調査」は、日本の職場に潜む“静かな危機"を、静かに、しかし明確に可視化した。
この調査結果は、私たちが見過ごしてきた「休憩」というテーマに、新たな光を当てている。
パーソル総合研究所「はたらく人の休憩に関する定量調査」
https://rc.persol-group.co.jp/news/202501301000.html注目すべきは、「休憩時間が長いほど、業務への集中力が高まる」という、極めてシンプルで本質的な事実だ。さらに、実際に休めていると実感している人ほど、生産性を落とすプレゼンティズム(心身不調による出勤低効率)が低い──。ここには、日本社会がずっと否定し続けてきた“当たり前"がある。
だが問題は、「休憩時間の長短」だけにとどまらない。
「誰がその休憩を許容しているか」「職場の空気が休憩を歓迎しているか」が、生産性に深く関係しているというのだ。
上司や同僚が黙認するのではなく、快く承認する職場こそが、心身を回復させる真の休息を生む。これは、単なる福利厚生の話ではない。「生産性向上の鍵」であり、「人材戦略の核心」なのだ。
そして、もう一つ私たちが直視すべき現実がある。
従業員は、自分なりに「頑張っている」と思っている。だが、その頑張りが、企業が求める方向性と必ずしも一致していないことが少なくない。
休憩も取らず、疲労を溜めながら遅くまで残る姿を「頑張っている」と錯覚していないか。
それは、真のパフォーマンスに結びついているのか──。
実は企業が求めているのは「回復し、集中し、成果を出す」働き方であるはずだ。にもかかわらず、その前提となる「質の高い休憩」の価値が、いまだに正しく理解されていない。
今回の調査では、休憩の取り方も6タイプに分類された。最も「休めている」と実感したのは、身体を動かしたり自己啓発に励む「自己投資タイプ」。同僚と交流する「会話・食事タイプ」も、生産性低下リスクが低いという。
つまり、ただ時間を与えるだけではない。「休み方の質」が、成果を左右するのだ。
企業は今こそ、従業員の“頑張り方"を問い直すべきだ。
そして、正しい方向に導くべきだ。
長く働くこと、休まず働くことが“美徳"だった時代は終わった。
今、求められているのは、「戦略的に休む力」なのだ。
頑張る方向性を、間違えてはいけない。
働き方の質、そして休み方の質が、これからの企業の競争力を決める。